【読書感想】イスラエルがすごい:熊谷徹著~神との対話とフツパーの精神~

 

こんにちは!

久々の読書感想。

今回は、ドイツ在住のジャーナリストである熊谷徹さんの『イスラエルがすごい~マネーを呼ぶイノベーション大国』を読みました。

日本ではあまり馴染みが薄いというか、イメージしても戦争が起こっている地域という中東の国のイスラエルについての本なのですが、本のタイトル通り「イスラエルすごい」と思わされる内容でした。

 

イスラエルのここがすごい

この本の中で「イスラエルがすごい」と思った話をいくつかしたいと思います。

 

◆イスラエルがすごいその1「人材育成がすごい!」

イスラエルは国民皆兵という国で、必ず兵役が男性は3年、女性は2年あるようです。

国民がみんな戦士であるイスラエルですが、現役の兵士へのリスペクトが凄いようです。

中でもアメリカのNSA(国防総省の諜報機関)に負けず劣らずな情報戦が出来る8200部隊というのがイスラエル軍にあるのですが、そこでは1%のエリートの中の更に1%しか生き残れないほど優秀な人材がいるそうです。

この本によれば、大体16歳くらいから兵役に就くにあたり適正を測られるそうなのですが、情報技術に長けた人材を集めて無理難題の課題を出して、如何に独創的な解答が出来るかが重視されるとか。

その根底には、小さい時から言われている自分の頭で考えることがありそうです。

後述するフツパーという上下関係無く意見を言い合うという文化にも関係してきますが、兵士という立場でありながら上官の命令にただ従うことはしないという驚きの慣習があるそう。

基本的に上官の命令は絶対という軍隊において、上官の攻撃命令に対して部下の兵士が違うと思ったら攻撃せず、戻ってきてから何故攻撃をしなかったのかを説明するという日本やアメリカでもありえないことをしているイスラエル凄すぎです。

更に、この8200部隊の出身者が国家の為に作り上げたシステムを民間に移行して、サイバーセキュリティに特化した会社を作って世界から注目されるという事が多々あるとか。

背景にはイスラエルという国の大きさも関係しています。

約870万人という小国であるが故に、自国内での経済発展よりも海外に出ていくことが重要になるわけですが、それには海外の人が注目するような技術が必要になります。

それを軍隊という場で磨くことで、通常の民間企業では作り得ないものが出来上がるのだと思います。

 

イスラエルのここがすごい!その2「失敗を恐れない精神」

人材育成の話にも通じるんですけど、イスラエルでは独創的な思考が求められますが、それには数々の失敗がつきものです。

しかし、その失敗についてイスラエルの人はこれまた小さい時から失敗することを推奨されます。

自分の頭で考えて実行して失敗して次につなげる。

日本とはおよそ真逆ですね。

失敗というものに関して日本で思うことは、失敗=負け、終了、取り返しがつかないというイメージがあります。

イスラエルでの失敗というのは成功までのプロセスと言えそうです。

もちろん中には成就しない事柄もあると思いますが、論理的に達成しないという結論が明確になることで同じ失敗は避けられることになります。

どちらにしても、プロセスすべてに実りがあると言えます。

日本の失敗の根本には取り返しがつかないという焦燥があるように思います。

先日見たニュースの話題では、インドの企業が日本の企業と仕事をしたくないという人が増えているものがありましたが、その理由が日本の企業はプロジェクトの開始まで遅すぎるからだそうです。

「やろう!」という話が出てもそこから日本の企業はそのプロジェクトをするかしないかを徹底的に精査したあげく「やらない」となることが多いと言います。

これもプロジェクトが失敗して無駄な経費をかけたくないという合理的な判断なようで、その実、失敗を恐れているだけとも言えます。

ビジネスとして成り立つかは、小さい規模で試していけそうなら資本を投下する方が賢明だと言えます。

しかし、試しもしないであーだこーた言って止めるのは、そもそも新しいことをしたくないだけとしか思えません。

失敗して取り返しのつかないことをしたくないという思いは分かりますが、やってみないと分からないことが多いなかで取り返しがつかないという結論を出すことも大きなリスクであることを知る必要がありそうです。

何も起こらなかったからそれでOKという発想があると、現状維持しかできません。

現状維持でやっていける時代なら良いのだと思いますが、今はそれどころじゃないと思う今日この頃です。

 

イスラエルのここがすごい!その3「神様にも反論しちゃうぜ!」

イスラエルはユダヤ教の国です。

イスラエル国民になる為には、ユダヤ教に改宗することが必要ですが、逆に言えばユダヤ教に改宗すれば誰もがイスラエルの国民になれると言えます。

そんなユダヤ教が国教となっているイスラエルですが、先ほどの軍隊でも上官の命令に従わないという話にも通じる内容で、上下関係無く、忖度0%で議論することが当たり前なのだそうです。

大学では生徒が納得できない部分は先生に対して質問責めにすることは当たり前。

これらをフツパーというそうで、意味としては「(知性や論理性でもって)物怖じしない態度」ということです。

何でもかんでも質問するのではなく、質問する側も持てる知識や論理を駆使してどんどん質問をするわけです。

反論から学び知識を増やしていくわけです。

このフツパーというのは、ユダヤ教であることが大きく関係しているようです。

モーセという人を聞いたことがあると思います。あのモーセの十戒で海を割ったっていう話です。

そのモーセはよく神様へ質問や反論をすることがありました。

道徳に基づく反論に対しては神様も意見を改めるというのがユダヤ教だと言えます。

例えば、今日の数学が発展した背景には、このユダヤ教があると小室直樹さんの本にもありました。

簡単に言えば、神様との対話において論理的矛盾があってはいけないという所から、その矛盾をひたすらに解いていった結果が今日の数学の在り方に寄与しているとか。

神様にも対話を挑めるなら、誰とでも議論できちゃいそうですよね。

 

イスラエルの独立精神

イスラエルのここがすごいという点を挙げましたが、イスラエルという国において凄いなと思う点として独立した精神は日本も見習う部分があっても良いと思わされます。

技術大国と言えるイスラエルはドイツと関係が深い国です。

情報技術に長けたイスラエルの技術を供与することで自国の発展に使うドイツ。

一方で、一帯一路を進める中国とも繋がっていたり、アメリカの後押しも受けたりと人気者じゃないの!と言いたくなるイスラエル。

ただ、日本も同じように各国と連携がありますが、イスラエルのように忖度0というわけにはいきません。

イスラエルがすごいのは、仲良くしているアメリカからもスパイを通して秘匿情報を貰おうとしたりするのだとか。

他にも国連なんてなんのその!自分の国でなんとかしちゃうもんね!という気概を持っているそうです。

国の在り方、他国のとの関わり方はそれぞれですが、今の日本を見ているとアメリカとなし崩しになっても何も言わないでいるんじゃないか?とすら思ってしまいます。

アメリカが危うくなったとしても蜜月関係にあった仲だから日本もアメリカと共倒れるのが筋とか、ヘンテコな考えを持った人が一定数いるんじゃないか、と。

この辺りの政治の在り方については、よほど情報に精通していなければ難しいところですけどね。

 

まとめ

イマイチまとまりがないまま、最後のまとめに強引にいこうと思います。

まとまりがないことについては、やっぱりイスラエルという国自体にあまり馴染みが無いからかもしれません。

あるとすると、海外ドラマのブラックリストでイスラエルの工作員であるモサドの女性兵士サマルという美人がいるという話とか、その中で出てきたアイアンドームという防衛システムが優秀だとか、とある人の話でロッキード・マーティンよりもイスラエルのミサイルの方が優秀という話だったりという程度。

後は、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという人の本を読んだことがあるのですが、このカーネマンさんがイスラエルの人という位の情報しかありません。

もっと文化的な部分で、どんなごはんを食べているとか、観光とか、音楽とかエンタメは何が流行しているのか?などなど、身近な話題が無いことで馴染みが無いと感じるのだと思います。

でも、今回の『イスラエルがすごい』を読んで、そういった文化的な側面も知りたいと思いました。

また、この熊谷徹さんがドイツに住んでいることからドイツとの関わりという点が掘り下げられていたことで、イスラエルのことを単独で知るよりも分かりやすかったように思います。

読みやすく書かれているので、イスラエルのことを知りたい人の入門にはうってつけじゃないかと思いました。

それでは!