【読書感想】「ドイツ帝国」が世界を破滅させる:エマニュエル・トッド

こんにちは!

今回は、フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッドさんの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』を読みました。

内容を簡単に説明すると、まず、いくつかのインタビューをまとめた本です。


2011年11月~2014年8月までに行われたインタビューです。

トッドさんが注目されていることの一つに、1976年に『最後の転落』でソ連崩壊を予測していたことや、『帝国以後』でサブプライムローン問題に端を発した2008年の金融危機を予測していたことが挙げられます。


また、本書の中でもイギリスEU離脱の可能性を間違いないと語っていました。

実際、2016年にイギリスのEU離脱が国民投票で決まり、ここ最近も合意無き離脱になるのか?などなど、世界が注目している状況になっていますが、そのことも予測していたわけです。


それで、このトッドさんが面白いなぁと思うのは家族構成に見る国民性や、出生率や乳児の死亡率などの高低がその国が衰退しているのか成長しているのかを示しているなどなど、聞けば納得できるんですすが、その視点が新鮮ということもあって何冊も読んでいます。

また、日本のメディアを見ていると日本がアメリカ寄りであることは分かるのですが、それがイコール「ロシアは恐い国」みたいな感じにもつながります。


でも、今回の『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』を読んでいると、ロシアの現状が経済も伸びて乳児死亡率が減ってきている状況からすると、あたかも冷戦時代のようにロシアは戦争をしたがったているなんて事はなく、むしろ戦争なんかしたくないという立ち位置にいるという事が分かります。

日本のメディアで親ロシアを唱えるメディアはあまりみかけません。


文化的な一面としてフィギュアスケートやバラエティー番組などを通じてロシアを紹介することはあれども、日本とロシアはもっと協調した方がいいという人はあまり見かけません。

更には、アメリカと中国の動向が世界の方向性を決めるんじゃないか?というような事を言ってるように見えますが、実際はアメリカは当に国内の力が弱く、中国も如何にも巨大な国家になったと見えて、経済的な危機に直面しているという話は見かけません。


中国についてはこの本では言及されていませんでしたが、トッドさん曰く男女比率の歪み(男性が圧倒的に多い)という点が問題の核にあると言っています。

一人っ子政策で意図的に男の子が産まれるようにしていた家族が多いようです。悲しい話ですが。


今回のタイトルにもなっているドイツですが、なぜドイツが世界を破滅させるというのかと言えば、EU内で強くなりすぎていること、そしてその裏には世界の富裕層の更に少数の力を持った人たちが政府を使い、銀行を使い、政府債務を膨らませて、潤っていると喝破していました。

簡単に言えば、たくさんお金を貸してその利潤で潤ってるんだそうです。


トッドさんの本国フランスに至っては、ドイツに対抗する、別の言い方をすればEU一人勝ちな状況を後押ししていると、痛烈にオランド大統領やサルコジ元大統領、責任ある立場にある政府の無責任さを批判しています。

読んでいて思うのは、フランスもエリートを育てる機関があるものの、上の人間が扱いやすいエリートが育つのみで、フランスをリードするようなエリートが中々育っていないようです。


日本もきっとエリートと言われる官僚の人も能力が高いのでしょうが、組織の構造上、自身の立場を維持しながらも良い方向へ進めて行くことの困難があるんだと思います。

同時に上の人間が扱いやすいエリートもいるので、力尽きてしまうんじゃないかと思います。あくまで想像ですが。


この本の内容の恐らく半分も理解できてはいないんだと思いますが、それでもこの本をおすすめしたい理由は、上記にも挙げたように日本のメディアを見てるだけでは見えてこない、日本のおかれている状況や世界の情勢に気が付ける、または自覚的になれるからです。

単純なところで言えば、「プーチンさん強そうだし戦争しそうでロシア恐ろしあ~」って思ってるならそれは間違いであること、「ドイツと日本って似てる所あるよね」と思ってたとして、家父長制という家族構造は似ているけど、日本人は主張しない。ドイツ人ははっきりと主張しまくる的な違いがあること。


日本にいるだけでは分からないことを知るきっかけになるという点でも、おすすめしたいなぁと思いました。

それでは。